オーナーズエンジニア(設計コンサルタント)のニコム

はじめに

 弊社では、1998年9月アメリカサンシティをはじめとした施設を視察し、オーストラリア、イギリス、スウェーデン、デンマークなど定期的に企画をしてきました。
オーストラリアの視察では、認知症の権威、ボブ氏と出会い認知症の方の考え方や行動を学び、弊社でもボブプランを研究し設計に反映してきました。
（例）GHスマイルのかみのくら　など

はじめて企画したアメリカの視察から約10年が経とうとしています。当時の視察では、「10年遅れている日本とアメリカを比較する」「2000年から始まる介護保険制度を前に先進国の現状をみる」といった目的をもって望みました。
では、今年10年が経つ中でアメリカはどのように変わり、日本はどの方向性に向かっているのでしょうか？
これから主流となる50～60歳の年代のニーズを考えて見ます。

視察先紹介

 1．Sun City West
　　　- 　Freedom Inn at Sun City West
　　　-　Grandview Terrrace
　　　-　Grandview Care Center

・　民間のデベロッパー、デルウェブ社が構築したリタイヤメントコミュニティ
・　昨年の訪問者18000人、約26000戸の住宅に4万2000人が生活をしている
・　現在、フェニックスには、1960年代に開発された「Suncity」以外に、今回の視察先にあたる1980年代「SunCityWest」、近年規模拡大をした「SunCityGrand」がある
・　現在のSunCityの共有施設の状況
　　　-　Sun City　⇒　レクリエーションセンター7件、ゴルフ場11件
　　　-　Sun City West　⇒　レク3件　ゴルフ場7件
　　　-　Sun City Grand　⇒　レク1件　ゴルフ場1件

高齢化人口の増加のなかで、グランドに至っては規模が小さくなっているように思えますが、これも1つの時代の特徴ではないだろうか？
デルウェブ社の当事者のデルウェブ社CEOハネマン氏は、自らが実施したベビーブーマー調査をふまえ、

「われわれは、もはやシャッフルボード･コートは作らない。かわりにこれからはコンピュータルームや温浴施設、そして大学のクラスルームを作る」と語っている。

全米退職者協会（AARP）の調査でも、ゴルフコース、太陽光線の多さ、シニアセンターはもはや退職者にとって優先順位は低く、かわりに、よい隣人関係や自分の好きなスタイルで仕事ができることなどが優先順位の上位に挙げられている。
確かにサンシティ近郊には、アリゾナ大学西キャンパスがあり、サンシティからも学生として通ったり、教授として足を運ぶ人がいる。今、住んでいる人の中でも世代交代の声がでており、実際に大手ジムも進出している現状がある。

また、特徴の1つとしてボランティアの町としても有名である。町全体が非常に綺麗で街の中に入ると確かに路肩などにゴミは落ちていません。
病院のスタッフや警察、消防など経験者であったりもするが、やりたいと思ったことをボランティアで行っている。

年齢制限55歳以上についても大きな理由がある。
それは、アメリカの税金の問題をクリアするためである。アメリカには、連邦政府の税金、州の税金、市町村の税金があり、市町村の税金の中には、学校税や福祉税が含まれており、割合が高い。そのため、55歳以上、家族も19歳以上としていることで、税金を排除しているのである。

※　ここPhoenixは、日本の姫路市と姉妹都市関係にあるためイベントなども行われている。

2．The Academy Village

・　アリゾナ州ツーソンにあるアリゾナ大学と提携しているカレッジリンク引退者コミュニティである。
・　日本の関西大学、立教大学でも学習意欲の高い人をターゲットとしている取り組みが昨今行われている。ただし、視察して分かったことだが、ここアカデミービレッジでは、教授（博士号）など学位取得者が多く、入所後もクラスを受け持ったり、別の学を志す方が多い傾向がある。
・　アリゾナ大学の名誉学長、コミュニティ創設者であるコフラー氏が開設。現在も奥様とご一緒に入居している。
・　特徴の一つとして利用者の人による委員会が設けられており、利用者の考えによって運営や方向性を決めている。

3．The Angelus Plaza

 ・　1000を超える大規模なシニアアパート
・　ボランティア団体など居室を間借りしており、家賃などが無償の変わりに各サービスを無償で行っている。外部へのサービスも勿論行っている。
・　LAX（ロサンゼルス）ダウンタウン中心に位置し、旧カワダホテル前に位置する
・　現時は、アジア系の利用者が多い

4．The Fran and Ray Stark Villa

・　Motion Picture and Television財団による、ハリウッド関係者のみが入居が可能な施設
・　基本は、有名俳優や監督などによりドネーション（寄付）により構成されている。